昔々22歳の時、半月もデザイナーのトップになった。

 デザイナーの仕事は、(1)相手の問題を理解・把握し、(2)その解決の着想をする。(3)そして形にしていく、いわば施工。この三段階に別れる。だからアシスタントデザイナーは、その施工の部分的なアシストを行い、施工の全体に意識を広げてゆきつつ、デザイナーになれる為の準備段階にある人だと思っている。  僕は一番最初に入った会社で、アートディレクターの下で仕事を行っていた。対外的にはデザイナーという肩書きだったのだが、当時の自分に出来る事といったら、アシスタントデザイナー以外の何者でもなかった。  ところがふとした事がきっかけで、入社半年で突然まがいもののアートディレクターとして仕事をするようになった事がある。ある日、信頼していたADが撮影のロケ場所を押さえておらず、業務が滞ってしまうことがあった。それは車の広告撮影だったのだが、ロケハンに始まり、許可どり、モデルの手配、車の搬入、日の入りの方向、部品のチェックなど、細かい作業が山積みだった為、もれてしまったのだろう。

次の日からそのADは出社してこなかった。それと同時に彼と一緒にやり始めていたスキーメーカー、クナイスル、ゲッツェ、カレラなどのカタログ制作も中断してしまった。 すると社長から「お前、アートディレクターをやれ。」と突然話がきた。「ハァ?」「アートディレクターの立場になってデザイナーをやるんだョ。」「いや、ちょっと…。」「いいからやりなさい!」一方的に押しきられ、嬉しさ半分とその場の成り行きでつい引き受けることになってしまった。

 その日の夕方から、孤独で怪し気な偽ADの誕生である。クライアントも昔、アートディレクターだった人で見る目が非常に厳しかった。当時を振り返ってみると、まだまだ未熟なところがいたる所にあったと思う。そんな事を思い出すと今でも恥ずかしい。しかしこの強引ともいえる成り行きで、僕はそれまで自分の限界や視野というものを勝手に決めつけていたことに気がついた。自分は、「アシスタントデザイナーなんだ。これだけなんだ。」と思っていても自分以外の誰かが本人の思い込みよりもでっかい事を要求してくるとはじめて「やってみよう」とエネルギーがあがってくるもんだ。


 ただ学生時代の友人のデザイナーよりかっこつけたかっただけなのだが、七転八倒して出来合がったカタログは凄く嬉しかった。

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Alchemia Tapestryのファイルを昨日から、1998年ぐらいの物→探す→Illustratorの古いバージョン→ なんとかなった!→exec形式!!→読めない→考える→ディスクが遅い→なんとかなんないかな と。。