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SHIBAYAMA
WORKS

Produced in 1992

SEIKO ALBA 腕時計 広告

Modelingについて

 1990年に世界一周から帰ってきた僕は、インドで得たインスピレーションをもとに、写真やイラストとは違う、新しい表現を探してコンピュータMacintoshⅡfxを仕事場にもちこんだ。ちょうど 3DソフトShadeを買って間もなかった頃(当時はソフトだけで175万もした!! Macintoshは125万円)。

 1992年にSEIKO ブランドの一部「ALBA」の腕時計の広告全体の競合プレを頼まれた。4社競合からとった 代理店には、年間分の雑誌の扱いほとんど全てと、「少年ジャンプ」の表4の扱い全てが許可されるので、代理店の真剣さがよく伝わってきた。

 その中で、何案かカンプボードを制作したが一案コンピューターグラフィック案を入れた。その時のALBAのアイテムはシンプルな文字盤の時計で、一度プーマのサッカーシューズの広告CGをつくったことがあったので、できそうだと思っていた。ALBAも若者マーケットの商品なので今までの、写真でもないイラストでもない何か新しい表現が必要だと予測した。プレゼンはこのCG案で通った。

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益々見えない。

 Shadeを使う事にしていた。そんなマックのクロック周波数でたった8MBのメモリの中で、どううまく見せていくのか、という戦いだった。ボディと文字盤のPICTを貼り込むとすぐ、「Not enough memory」と表示され、レンダリングが進まない。しかも、その表示がでるのも15分や20分待たされてからだ。その上、リドローだけでも2分や3分待たされてしまう。

 恐ろしいほど遅いのが当たり前だった。だからモデリングをバラバラにし細かくレンダリングして後に合成する。


 しかし、やはりモデリングを合体させると、8MBのマックではレンダリングできなかった。そして、さらに追いうちをかけるように、文字盤を規則的に配列された数字やメモリをそのデビューしたてのPhotoshop1.0のみで正確につくるのは不可能だとわかった。当時はレイヤーさえない。もう気違いてきに丁寧に手で張り込んでいかなければ行けないと地獄で腹をくくった。

 

イラレがフォトショと互換性を持った。

 しかし、ちょうどIllustrator88のデータがPhotoshopの新しいバージョンで読み込み可能になったというニュースを聞いた。当時のMdNの猪俣さんありがとう。これで早速Illustratorで制作した文字盤のグラフィックデータをニューバージョンPhotoshop2.0でコンバートして、ギリギリ解決しそうだ。そんなメチャクチャな時代だった。しかし面白かったし、初めての体験だった。

 また、レンダリング時の「Not enough memory」は、バンド部分とボディ部分と同アングルで別々にレンダリングしたものをPhotoshopで合体することで解決した。

 しかしレンダリングしはじめてコンピュータを回しっぱなしで三日目の朝にフリーズしてマック特有のあの懐かしい爆弾マークが何度も出た。コンピュータに殺されるかもと思った。何度も同じ机で同じ姿勢で朝日を東京タワーで見た。今の時代だったら、もちろん一度でレンダリングできるのだろう。

事故のあと夢を見た。

 夜中や朝方、会社に行き13インチのモニタを覗き込み、Shadeがリスクボードを使用して4つの小さな点を動かしているのを確認することは、恐怖でもあり楽しみでもあった。たまによく3、4日たってからフリーズしていることもあったからだ。その為、仕上がりまでの日時をよく逆算したものだ。 

 ラージピクトの計算時間はその当時、普通の方のレンダリングのボタンを押して、ストップウォッチで計ると計算できたのだ。つまりストップウォッチで60分だったら、ラージピクトは8×8倍の面積なので64倍必要になるわけだ。60分×64=3840分、つまり2.66日間弱という計算になる。これで用意してあるモデリングに次々とレンダリングをかけていく。

 

 しかし、会社の人間が間違えてコンピュータのコンセントを抜いてしまった事故が起きた。ベランダに行ってタバコを大きく吸った。原稿締め切りはまじかだ。何とか大切な子供を生き返らさなければ!その日は帰宅してモーツアルトのレクイエムが頭の中流れていた。疲れ果て寝てしまっていた。

 しかし不思議な夢を見た。なんと逆側からレンダリングしている。しかもドンピシャのアングルで。見えた。生き返らす方法を。

 つまりその場合は一度正方向のラージピクトをそのままにして、こんどはモデリングをカメラを90度回転させ、さらにレンダリング・ダイアログボックスの中で90度回転させるとまったく逆から計算できることを発見した!!(これは当時門外不出にした。)これで最後に両者をPhotoshopで合成して一枚にできる。おかげで後に余裕を持ち仕事ができる様になった。クオリティーが良くても納期に間に合わない広告に、全然意味はない。

 途中は省くが、ブルー惑星に3D-CGの時計がついに出来た夏のキャンペーンで使われるそのビジュアル。天地左右8000pixel程度のものをレンダリングさせPhotoshopで合成し、これは後にビルボードにもなった。

 

表現は技術を求め、技術は表現を求めている。

 忘れてはいけないのはその時代が要求しているかもしれない、ベンチャースピリットだと思う。その当時は大型合成用コンピューターは、アンチMacだったのでインポート用のプラグインソフトも開発されておらず、はじめてデータを移動したような時代であった。 

 なにもかも、ちょっとずつ足りなかったりチグハグだったりする環境ではあったが、夢はいつもあった。いろんな人々からCGの反対意見が出まくっていた。とにかく僕はバーチャルロケだといつもまわりに言いふらしてまわって、コンピューターの中にロケセットを持ち込み、その中での無重力感や光と影のピュアーなビジュアルを楽しんでいた。
 時ははるかに流れはやあの時の世論がアンチコンピュータデザインから現在、コンピュータは無ければならない時代を超えて成長した。つまりパソコンは昔の蒸気機関車であったなら現在の最新宇宙ステーションと同じである。そのぐらい進化した。すぐそこに量子コンピュータがやってくる。

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  • client: 服部セイコー

  • project: ALBA雑誌広告

  • cg/design: 柴山信廣

  • ad: 横川 覚

  • cd copy: 佐藤達郎

  • agency: ADK

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